ヘレスビールは産業革命が生んだビール

Beer Is Part of the Tradition as the Concord Singers Practice Singing German Songs in New Ulm, Minnesota...
Photo By [The U.S. National Archives]

◆ヘレスビールは産業革命が生んだビール

ヘレスビールが誕生した背景にはイギリスを発端とする産業革命がありました。大型の工業機械が発明され、様々な製品が大量生産できるようになると、人々の生活スタイルは大きく変化し、ビールを取り巻く環境にも大きな影響を与えました。

まず、ひとつはガラスの器の登場です。18世紀以前、ガラス製品はとても高級品でした。実際に使えるのは王様や一部の貴族だけ。一般の人々がビールを飲む器と言えば、陶器の器(シュタイン)でした。焼き物の器は、ビールの色を外から見ることはできません。当時はドンケルのように濃い色のビールだけでしたが、人々はそれほどビールの色に関心を持っていませんでした。また、当時のビール醸造技術では、味と香りの違いを出すことができても、色の特徴を出すことができませんでした。というのも、当時は、麦芽を直火で乾燥させていたため、どうしても焦げたような色が麦芽についてしまい、それがビールの色にも影響していたのです。

ところが、産業革命を契機にガラスの器が安価で出回るようになると、人々はビールの色にも関心を持ち始めます。「違う色のビールが飲みたい。」その思いを一番強くし、新しいビールの開発しようとしたのが、ピルゼン(現チェコのピルゼン市)の領主でした。ミュンヘンからブラウマイスター(醸造職人)を招へいし、明るい色のビールの研究を始めます。試行錯誤を繰り返した結果、高温の熱風を当てて麦芽を乾燥させる技術を開発し、明るい色の麦芽を作ることに成功。こうして、明るい色のビールが誕生したのです。

◆水の違いが、色の違い。

最初にピルゼンで誕生した明るい色のビールが「ピルスナービール」です。後に、ミュンヘンに帰ったブラウマイスターが、同じ技術を使って明るい色のビールを造りました。これがヘレスビールです。当時主流だった濃い色のビールと比べて「明るい」ので、ドイツ語で「明るい」という意味の「ヘレス」と名付けられました。

どうして同じ技術を使って作ったのに、違いが生まれたのでしょうか。それは、ビールを造る際に使った水が違ったからです。ピルゼンはミネラル分があまり含まれていない「軟水」、ミュンヘンはミネラル分が多く含まれている「硬水」です。ミネラル分が多く含まれている水を使うとビールの色が濃くなり、ミネラル分が少ない水を使うと明るい色のビールを作ることができるそうです。ドイツでは地域ごとに特色のあるビールが造られています。ドイツの南部は硬水の地域が多く、北部は軟水の地域が多いそうです。ビールの色や味の違いは、ビールに使う水の違いもあるのです。

小樽ビールで使用している小樽の水は軟水ですが、ピルスナーのような明るい色のビールも、ドンケルのような濃い色のビールも作っています。小樽の水は軟水ではあっても、ミネラル分も適度に含まれているので、濃い色のビールも明るい色のビールも、もちろん、ヘレスビールも作ることができます。
ビールと水の成分には、深い関わりがあるのです。

「Prost!」より

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